文档:野中君发吉卜力新闻/2014年

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 2013年 2014年 2015年
「野中くん発 ジブリだより」1月号
 
 皆さん、明けましておめでとうございます。2014年が始まりました。
 スタジオジブリにとって昨年は、2本の長編を公開するという異例の年でした。7月20日に封切られた宮崎駿監督の「風立ちぬ」、そして11月23日に封切られた高畑勲監督の「かぐや姫の物語」。おかげさまでどちらの作品も非常に評価が高く、また、多くの方に作品を観ていただくことが出来ました。深く御礼申し上げます。もっとも「かぐや姫の物語」はほぼお正月映画同様の公開時期であり、上映はまだまだ続きます。ご覧になっていない方がもしいらしたら、どうかお近くの劇場でご鑑賞下さい。
 高畑勲監督作品と宮崎駿監督作品の長編2本の大作を完成させ、連続して公開するというのは、制作部門にとっても事務部門にとっても大変な1年でした。「かぐや姫」の公開はまだ続いていますが、ともかく、この2本を世に送り出した昨年は、ジブリにとっても大きな節目の年だったと思います。その年を乗り切った今、新年は新たな気持ちでまた進んで行けたら、と思います。
 今年のジブリについては、昨年末に発表されたとおり、「思い出のマーニー」を夏に公開予定です。この作品は、ジョーン・G・ロビンソン著の同名のイギリスの児童文学が原作で、監督は米林宏昌くん。「借りぐらしのアリエッティ」に続く第2回監督作品となります。現在、鋭意制作中ですので完成まであと半年ほどお待ち下さい。
 三鷹の森ジブリ美術館もお陰様で昨年は大変好調でした。新作映画が公開される年というのは、それだけ世間でジブリに対する注目が高まるので、連動して美術館の入館者数が増える傾向が以前からありました。しかし一昨年くらい前から、ほぼ連日満員の日々が続いており、これはどうも映画の公開に関わりなくそうなっているようです。海外からのお客さんが増えたのも理由の1つらしいのですが、ともかく有難いことです。三鷹の森ジブリ美術館は新年は例年通り1月3日より営業を開始しました。現在企画展示として、昨年より引き続き「ジブリの森のレンズ展」を開催中。チケットは予約制ですのでコンビニエンスストアのローソンで予めお求め下さい。
 というわけで、改めまして、スタジオも美術館もどちらも、本年も宜しくお願い申し上げます。
 
「野中くん発 ジブリだより」2月号
「野中君发 吉卜力新闻」2月号
 スタジオジブリ最新作の高畑勲監督作品「かぐや姫の物語」は依然大ヒット公開中ですが、お陰様で作品自体も高い評価を得ており、大変有難いことです。先日は毎日映画コンクールのアニメーション映画賞、日本アカデミー賞の優秀アニメーション作品賞を受賞しました。まだご覧になっていない方がもしいらっしゃったら、ぜひお近くの劇場でご覧下さい。「かぐや姫の物語」については、関連書籍も出揃ってきました。定番の『ジ・アート』、絵コンテ本が昨年12月に出て、年が明けて『アニメ絵本』と『フィルムコミック・上』が1月末に発売になり、『フィルムコミック・下』が2月末に発売予定です。ここに挙げた本はいずれも発売元は徳間書店ですが、『ジ・アート』と絵コンテ本はどちらも専門性が高い本なので、制作現場とダイレクトにつながっている強みを生かして、いつも通り編集をスタジオジブリ出版部が担当しています。2冊とも読み応え十分ですが、特に今回の絵コンテ本は、上映時間が長いことに加え、高畑監督の詳細な指示が盛り込まれ過去最高の分厚さとなっており、一読の価値があります。
 ところで、賞といえば、宮崎駿監督作品の「風立ちぬ」も、昨年末から海外での受賞が続いています。北米ではニューヨーク、ボストン、サンディエゴ、シカゴ、トロントなどの各地の映画批評家協会賞、そしてナショナル・ボード・オブ・レビュー賞を、それぞれアニメーション映画の部門で受賞しており、先ごろ米国アカデミー賞長編アニメーション映画部門にもノミネートされました。アカデミー賞については発表が3月2日(日)、日本時間だと3日(月)ですが、果たして今回はどうでしょうか。思えば「千と千尋の神隠し」がアカデミー賞を受賞したのは今から11年前のことでした。「風立ちぬ」は海外公開も順次進んでおり、昨年中に韓国、台湾、香港で公開され、1月22日からはフランスで上映が始まりました。北米では2月21日より限定公開、翌週の28日からは拡大公開となります。ロシアでも2月20日、オーストラリアも2月27日にそれぞれ公開予定で、各地で多くの人に観ていただけることを期待したいです。
 さて、スタジオでは、先月もお伝えしたように新作「思い出のマーニー」に昨年から取り組んでいます。監督はこれが第2作目となる米林宏昌くん。詳しい情報についてはすみませんが今しばらくお待ち下さい。
 吉卜力工作室最新作、高畑勋导演作品《辉夜姬物语》依然在热映中,承蒙各位观众的支持,此部作品得到了很高的评价,非常感谢各位。
 前天,获得了每日竞赛的动画电影奖及日本学院赏的优秀动画作品赏这两个奖项。若是还未来得及观看的观众,请一定到附近的剧场去观看一下。
 有关于《辉夜姬物语》的相关书籍已经出的差不多了。期刊《THE ART》、绘本也于去年出版了,过年之后,《动画绘本》和《FILM COMIC》也于一月末出版,《FILM COMIC 下》也预计在2月末出版发售。上面所列举的这些书籍的发售方是德间书店,因为《THE ART》和绘本很具有专业性,所以,都是和制作现场直接挂钩的,和往常一样,有吉卜力工作室出版部来担任这一部分的编辑。这两本是非常有读头的,特别是这次的绘本,还添加了高畑导演的一些详细的指示,非常具有阅读的价值。
 说起来得奖来,宫崎骏导演的作品《起风了》从去年年末开始,就得到很多的海外奖项。像是北美地区的纽约、波士顿、圣地亚哥、芝加哥、多伦多等地的电影评论家协会奖,还有美国电影评议会奖等许许多多的动画电影的部门奖项,就在不久之前还被美国奥斯卡长篇动画电影提名了。奥斯卡电影金像奖的举办时间是3月2日,日本时间应该是3月3日了,那这次会有怎样的结果呢。自《千与千寻》获得奥斯卡奖已经过去11年了。《起风了》在海外的上映也在顺利进行,去年一年分别在韩国、台湾、香港等国家和地区上映,1月22日开始就在法国上映了。2月21日开始在北美限定上映,下周28日开始扩大上映。俄国于2月20日上映,澳大利亚为2月27日上映,非常期待各个地区的观众能够前去观看电影。
 吉卜力工作室从去年开始就已经开始着手准备新作《回忆中的玛妮》了。此片的导演为米林宏昌。详细的信息还请稍作等待。
「野中くん発 ジブリだより」3月号
 
 現在、スタジオジブリはこの夏公開の米林宏昌監督作品「思い出のマーニー」をひたすら制作中ですが、宣伝が始まるまでにはまだ時間がありますから、この段階で皆さんにお伝え出来ることはまだあまりありません。ですが、ジョーン・G・ロビンソンの原作本上下2巻が岩波少年文庫から出ていますので、関心を持たれた方はまずはこちらをお読みになってはいかがでしょうか。基本的な内容はこの本を読めばよく分かりますし、映画化を別にしても、もともと優れた児童文学として大変面白い本です。岩波少年文庫といえば、米林くんの前作「借りぐらしのアリエッティ」の原作本『床下の小人たち』も、岩波少年文庫から出ています。「マーニー」と「アリエッティ」の原作は、どちらもイギリスの児童向けファンタジー文学で舞台もイギリスですが、ジブリによる映画化は2本とも日本に舞台を置き換えており、この点も2作品の大きな共通点です。「マーニー」の原作本について、宮崎駿監督は以前、次のように書いています。
「この本を読んだ人は、心の中にひとつの風景がのこされます。入江の湿地のかたわらに立つ一軒の家と、こちらをむいている窓。(中略)ずっと前に見たことがあるような気がして、なつかしいような、せつないような気持ちになって、とつぜんマーニーのことを思い出すのです。これはそういう本です。」(岩波新書『本へのとびら─岩波少年文庫を語る』より)
 確かにそうですね。この本を読むと、舞台となる屋敷のイメージが強く印象に残ります。宮崎駿監督も推薦するこの本、一度読んでみてはいかがでしょうか。
 さて、岩波少年文庫といえば、先日発表された宮崎吾朗監督の新作「山賊の娘ローニャ」の原作も、このシリーズに入っていますね。著者は『長くつ下のピッピ』等で有名なスウェーデンのアストリッド・リンドグレーン。今回、吾朗監督はジブリとは別の場所でこの作品制作に取り組んでいます。しかも映画ではなくテレビシリーズ。NHKのBSプレミアムでこの秋より放映開始予定で、制作・著作はNHKとドワンゴ、制作がNHKエンタープライズ、そしてアニメーション制作はポリゴン・ピクチュアズとまったく新しい枠組みです。ジブリは制作協力の立場。かつてジブリで監督デビューした若手2人が、同時期に、別々に西欧の児童文学を原作に映像化に取り組んでいるわけですが、どちらもぜひいい作品になって欲しいです。
 
「野中くん発 ジブリだより」4月号
 
 この先発売されるスタジオジブリ関連のブルーレイ・DVDソフトについての発表が、発売元のウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンから先日ありました。まず、6月18日(水)に宮崎駿監督の「風立ちぬ」が発売されます。特典として予告編集や絵コンテ、「ひこうき雲」のミュージッククリップが収録されますが、ブルーレイにはさらに、昨年6月24日(月)に開かれた完成報告会見の映像とアフレコ台本も収録。数量限定の予約特典として、映画の中で二郎が菜穂子のために作った紙飛行機を再現した紙模型が付きますので、ご予約はお早めに(一部店舗では取扱い無し)。
 さらに、宮崎駿監督の劇場用長編映画11作品をすべて収録したBOXセット「宮崎駿監督作品集」も同時に発売されます。こうしたBOXセットはジブリ作品では初。「風立ちぬ」も収録されますし、ジブリ作品ではないですが、宮崎監督の長編映画第1作「ルパン三世 カリオストロの城」も収録されるので、とても充実しています。特典として、昨年9月6日(金)に行われた引退会見ノーカット版、「ユキの太陽」パイロットフィルム、「赤胴鈴之助」の宮崎監督絵コンテ担当回全3話、「On Your Mark」を収録。本編11枚、特典2枚の全13枚組BOXセットとなります。
 また、7月16日(水)には「千と千尋の神隠し」のブルーレイディスクが発売。新作を除くと、ジブリの劇場用長編映画はこれですべてブルーレイ化されます。8月6日(水)には「ルパン三世 カリオストロの城」の単品ブルーレイ、DVDも発売になります。
 最後にもう1つ、スタジオジブリをテーマにした砂田麻美監督のドキュメンタリー映画「夢と狂気の王国」が、5月21日(水)にやはりブルーレイとDVDで発売されます。この作品の場合、製作はドワンゴで、ジブリは取材対象、被写体という立場でしたが、従来のメイキング物には無いユニークな作品になったと思います。この間、字幕付きで海外の映画関係者に観せる機会が何回かあったのですが、大好評だったとのこと。未公開映像を使用した30分以上の映像特典も魅力で、ジョン・ラセターさんも登場しています。
 「風立ちぬ」は宮崎駿監督最後の映画であり、つまり、新作のソフトが発売されるのも今回が最後となります。そう思うとちょっとした感慨がありますね。宮崎監督は現在、三鷹の森ジブリ美術館の新企画展示の準備に全力投球中ですが、そのお話はまた次号にて。
 
「野中くん発 ジブリだより」5月号
 
 この夏公開のスタジオジブリ最新作「思い出のマーニー」(米林宏昌監督)の情報が先日さらに一部、解禁になりました。改めましてお伝えしますと、まず、声の出演ですが、杏奈役に高月彩良さん、マーニー役に有村架純さんがそれぞれ決定しました。お2人ともアニメーションの声の出演は初めてで、期待が高まります。主題歌も新たに発表されました。アメリカのシンガーソングライター、プリシラ・アーンさんが、自作曲「Fine On The Outside」を歌います。プリシラさんは純粋でナチュラルな歌が高く評価されているアーティストで、この主題歌はとても映画によく合っていると思います。映像制作のスタッフですが、作画監督が安藤雅司くん。すでに脚本のクレジットに名前が出ていたので、多分そうだろうかと想像していた人も結構いたと思いますが、「千と千尋の神隠し」以来、久々にジブリ作品で作画監督を務めます。
 そして美術監督が種田陽平さん。実写畑で日本を代表する美術監督であり、海外でも有名監督と組んで沢山仕事をしてきた種田さんですが、アニメーション作品で美術設定を全面的に担当し、全シーン・全カットに目を通し美術監督をするのは初めて。すでに上がってきているラッシュを見ても、今までにない作品世界の深みと広がりを感じます。そしてプロデューサーは「かぐや」に引き続き西村義明くん。一部で報道がありましたが、今回鈴木さんはゼネラルマネージャーとして現場からは一歩引いた位置から指揮をし、「かぐや」のとき以上に西村くんが前面に出て制作と公開を引っ張ります。公開日は7月19日(土)。劇場では主題歌を使った予告編の上映も始まりましたが、スタジオは今、制作追い込みの真っ最中です。もちろん監督の米林くんも全力投入中。どうかご期待下さい。
 さて、話変わって三鷹の森ジブリ美術館ですが、5月31日(土)より新企画展示「クルミわり人形とネズミの王さま展 〜メルヘンのたからもの〜」が始まります。あまり知られていませんが、「クルミわり人形」の原作は宮崎監督いわく、実はメルヘンの宝物と言うべき豊かな作品です。今回は、宮崎駿監督が現実と幻想の重なり合うこの不思議な物語の魅力を、描き下ろしの展示パネルや造形物で展開して皆さんにご覧頂きます。こちらも現在、宮崎監督が映画制作と同様に全力を込めて制作中。なお、開催中の「ジブリの森のレンズ展」はいよいよ5月18日(日)まで。こちらもどうぞ宜しく。
 
「野中くん発 ジブリだより」6月号
 
 この原稿を書いているのは5月の半ば。7月19日(土)公開のスタジオジブリ最新作「思い出のマーニー」(米林宏昌監督)制作は追い込みの真っ只中です。アフレコも連日ジブリの試写室で実施中、と、書いてから思ったのですが、事情をご存じない方が読むと「なぜ試写室で録音を?」と疑問に思われるでしょうね。スタジオジブリの試写室は第2スタジオ(1999年完成)の地下にあります。当初は純粋に試写室として作ったのですが、ラッシュ試写(制作中の作品の上がりカットのチェック試写)だけでなく、いろんな映画も上映出来るように35mm映写機と多チャンネルの音響再生設備も用意しました。しかしジブリの所在地は住宅地です。そのため、音が漏れないよう防音を万全に施しました。そこでひらめいたわけです。防音したのなら、ここで録音も出来るじゃないか、と。今がまさにそうですが、声の録音は映像制作の追い込み中に大体行われます。その時期、監督は多忙を極め、出来る限りスタジオを離れたくありません。でも、アフレコに監督の立ち会いは必須です。というわけで、設計時には全然考えていませんでしたが、都心の録音スタジオとの監督の往復時間節約を主たる目的として、録音機材をその時だけ持ち込んで、ジブリ試写室でのアフレコが実施されるようになりました。長編では2001年の「千と千尋の神隠し」が最初ですが、当初はスタッフもすべて試写室内にいたため、録音本番中は全員一切音が出せず随分気を遣ったとか。その後、2003年初めに2スタ1階に機材を常設しコントロールルームを設け、そこから監督らスタッフが地下の出演者に指示を出すようになったのでこの問題は解消されました。やるべきだ、となったらいきなり予定変更をしてしまうのが実にジブリらしいエピソードですね。
 さて、この文の掲載号が出る6月中旬にはアフレコも終わり、主要キャストもすべて発表されているはずです。改めて書きますと、杏奈役に高月彩良さん、マーニー役に有村架純さん、そして松嶋菜々子さん、寺島進さん、根岸季衣さん、森山良子さん、吉行和子さん、黒木瞳さんという錚々たる方々。画の作業は、6月半ばだと作画はもう終わって撮影の最終段階。音楽収録も終わり、完成までいよいよあと一息です。
 西村義明プロデューサーいわく、「思い出のマーニー」は「ともかく瑞々しく若いです」とのこと。新ポスターもそれを象徴しています。どうぞご期待下さい。
 
「野中くん発 ジブリだより」7月号
 
 スタジオジブリ最新作・米林宏昌監督第2作「思い出のマーニー」ですが、6月25日(水)に初号試写を終え、ついに完成しました。思えばちょうど一年前の夏には「風立ちぬ」の公開があり、その後に宮崎駿監督の引退宣言、そして11月には高畑勲監督14年ぶりの新作「かぐや姫の物語」公開と、この一年、大きな出来事が続きました。そしてこの夏は「思い出のマーニー」。一年の内に3本の劇場作品公開というのはジブリ史上初ですが、両監督の大作2本の後、一転して、今度は若手監督の清新な作品の登場となります。
 改めて述べますと、原作はイギリスの同名児童向けファンタジーで、大変評価の高い作品です。米林監督の第一作「借りぐらしのアリエッティ」もそうでしたが、映画では、イギリスだった舞台を日本に置き換えています。ただ、「アリエッティ」のときは日本のどこかまでは設定しませんでしたが、本作では北海道としました。それゆえ、スタッフは制作開始前に北海道にロケハンに行き、釧路、根室、厚岸などを取材しています。主人公は12歳の少女、杏奈。そして本作にはもう一人の少女、タイトルロールのマーニーも登場します。Wヒロインもジブリでは初でしょう。この映画は、自分を見失い、心を閉ざしてしまった少女・杏奈が、療養先で不思議な金髪の少女マーニーと出会い、心を通わせるうちに、自分を取り戻し、感動の真実にたどりつく物語です。マーニーとは誰なのか。北海道の自然と周囲の人に囲まれながら、思いがけず謎が解けるとき、杏奈は"まるごとの愛"に包まれていることを知ります。米林監督は企画意図にこう書きました。「もう一度、子どものためのスタジオジブリ作品を作りたい。この映画を観に来てくれる『杏奈』や『マーニー』の横に座り、そっと寄りそうような映画を、僕は作りたいと思っています」。公開は7月19日(土)。子どもだけでなく、今、自分を見失いがちなすべての人々に、この映画は届くことでしょう。
 さて、「マーニー」公開と連動して2つの展覧会が開催されます。「思い出のマーニー×種田陽平展」(江戸東京博物館、7月27日(日)より)は、本作の美術監督で、元々実写映画の美術の第一人者である種田陽平さんが「マーニー」の世界を巨大空間アートで表現します。「ジブリの立体建造物展」(江戸東京たてもの園、7月10日(木)より)は、ジブリ作品に登場する様々な建物の魅力を多面的に紹介。どうぞ宜しく。
 
「野中くん発 ジブリだより」8月号
 
 スタジオジブリ最新作「思い出のマーニー」は7月19日(土)に無事初日を迎え、お陰様で大ヒット中です。改めて書きますと、本作は「借りぐらしのアリエッティ」で初めて監督を務めた米林宏昌監督の第2作。原作は高い評価を受けているイギリスの同名児童文学で、日本では岩波少年文庫から出ていますが、宮崎駿監督も大変好きな本です。映画は舞台を日本の北海道に移し、心を閉ざしてしまった12歳の少女杏奈が、転地療養先の海辺の村で不思議な金髪の少女マーニーと出会い、次第に心を開いていき、最後は感動の真実にたどりつくまでを描きます。原作と同様に、マーニーとは誰なのか、という謎解きがストーリーの中心にあり、その点はジブリ作品としては珍しいのですが、最後にすべてが明らかになり、劇的な盛り上がりと清々しいラストを迎えるのもあまりこれまでの作品にはなかったことかもしれません。とはいえ、杏奈とマーニー、2人の少女の交流がお話の中心ではありますが、作品世界はそれをずっと超えた広がりを見せ、結局のところ"生きる"ということを描いているのは、今までのジブリ作品と同じだと思います。北海道の自然や海辺の村での生活、杏奈やマーニーたちの気持ちを丁寧に描いて、ファンタジーの世界をリアルに作り上げているのもジブリらしいと言えるでしょう。皆様、どうかお近くの劇場にてご覧下さい。
 今作は若手監督の作品ということもあり、新しい試みがいくつかなされています。その1つが美術監督を種田陽平さんにお願いしたこと。種田さんは実写映画の美術監督として世界的に高く評価されており、岩井俊二、三谷幸喜、クエンティン・タランティーノ、チャン・イーモウら有名監督の作品で美術を手掛けてきた人です。アニメーションの美術監督は初めてでしたが、素晴らしい成果を出してくれました。種田さんとジブリは結構深いお付き合いをこれまでもしてきており、三鷹の森ジブリ美術館の2008~09年の企画展示「小さなルーヴル美術館」展、米林監督の前作公開時に開催された展覧会「借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展」で美術監督を担当していただき大好評でした。「思い出のマーニー」では本編の美術監督をまずお願いし、せっかくだからまた、この世界を実写映画美術の技術と創造力で巨大空間でも展開して頂こう、ということで、「思い出のマーニー×種田陽平展」が実施されることになりました。現在、両国の江戸東京博物館で絶賛開催中。こちらもどうかよろしく。
 
「野中くん発 ジブリだより」9月号
 
 この文章の掲載号が配布されるのは9月10日。季節は秋のはずですが、ここ数年の傾向を考えると、残暑が厳しそうです。スタジオジブリ最新作「思い出のマーニー」はまだまだ公開中。お陰様で幅広い世代の方から好評で、大変有難いことです。もし未見の方がいらしたら、どうかお近くの劇場でご覧下さい。
 さて、「マーニー」関連でいくつか展覧会が開かれていることはこれまでにも何度か書いてきました。両国の江戸東京博物館で開催中の「思い出のマーニー×種田陽平展」はいよいよ9月15日(月・祝)で終了ですが、もう1つ、同時開催の「ジブリの立体建造物展」は12月14日(日)まで、小金井公園にある江戸東京たてもの園で開催中。こちらも多くのお客さんにお越し頂いており、とても有難いことです。
 「思い出のマーニー」には「湿っ地屋敷」というとても印象的なお屋敷が登場します。物語の重要な舞台となる建物ですが、スタジオジブリ作品にはこれまで様々な建造物が登場してきました。こうした建造物に焦点を当てた展覧会がこの「ジブリの立体建造物展」。背景画や美術ボード、美術設定といった制作資料をふんだんに展示し、さらに、代表的な建造物をミニチュアの立体模型で表現して、その設計の魅力を探っています。採り上げる作品はジブリの出発点となった「風の谷のナウシカ」から最新作「マーニー」まで十数作品に及び、ジブリより前の「アルプスの少女ハイジ」も特別に登場。三鷹の森ジブリ美術館で以前行った企画展示で大好評だったアルプスの山のジオラマ模型を展示しています。展示の中心は絵ですが、「千と千尋の神隠し」の舞台となった湯屋・油屋は約3mの巨大模型を今回新たに制作しており、これがまたとても見応えがあります。監修を担当して下さったのは建築史家で建築家の藤森照信さん。専門家の視点でジブリ作品の建造物を解説して下さり、大変興味深い内容になっています。どうぞ皆様お越し下さい。
 会場である江戸東京たてもの園とジブリとは、約20年にわたるお付き合いがあります。藤森さんとジブリの出会いも、ジブリが編集したたてもの園の本がきっかけでしたが、今回、この本が『新 江戸東京たてもの園物語』としてリニューアルされました。こちらも藤森さんに全面協力いただいており、高畑・宮崎両監督と藤森さんの対談やジブリスタッフのイラストも収録。たてもの園で売っていますので、どうぞよろしく。
 
「野中くん発 ジブリだより」10月号
 
 10月17日(金)より「かぐや姫の物語」の北米公開が始まりますが、それに先立ち、9月にトロント国際映画祭で同作が上映されました。高畑勲監督も出席し、上映前に舞台挨拶。映画が始まると笑い声が頻繁に起こり、赤ん坊のかぐや姫の可愛らしい動きなどが大受けだったとのこと。でも悲しいシーンや緊迫したシーンでは一転して場内が静まり返り、みな息をのんでスクリーンに見入っていたそうで、本当に観客の反応が良かったそうです。上映後、高畑監督はQ&Aを行ったのですが、これも通常より長く熱心なやりとりがあったとのこと。北米公開に向けて弾みがついたのではないでしょうか。英語吹替版の声の出演ですが、かぐや姫にクロエ・グレース・モレッツ(「キック・アス」)、捨丸にダレン・クリス(TVドラマ「glee」)、翁にジェームズ・カーン(「ゴッドファーザー」)、媼にメアリー・スティーンバージェン(「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」)、相模にルーシー・リュー(「キル・ビル Vol.1」)などなど、豪華な布陣です。今回もスピルバーグ作品等のプロデュースで有名なフランク・マーシャルさんに制作指揮をお願いし、素晴らしい仕上がりとなりました。公開はプラットフォーム形式なので、都市部でまず始まり、徐々に広げて行くスタイルです。沢山の人に観て欲しいですね。
 さて、映画祭といえば、10月23日(木)から東京国際映画祭が始まりますが、目玉企画として「庵野秀明の世界」が実施されます。記者会見で語られていたように発案者は鈴木敏夫プロデューサー。庵野監督がこれまで関わったほぼ全作品が上映され、ジブリ関連の作品も数本ラインナップされていますが、中でも注目は10年以上前に三鷹の森ジブリ美術館の企画展示で上映されただけの監督作「空想の機械達の中の破壊の発明」でしょう。3分弱の短編アニメーションですが庵野監督のセンスが凝縮されており、今回を逃すと次の機会はなかなか無いと思われるので、是非どうぞ。
 最後になりましたが、宮崎吾朗監督がジブリを離れて取り組むTVシリーズ「山賊の娘ローニャ」がいよいよ10月11日(土)より開始です。NHKBSプレミアムで19時より放映、全26話(再放送は10月15日18時、以後毎週水曜18時半)。制作・著作はNHKとドワンゴで、プロデューサーは川上量生さん。アニメーション制作はポリゴン・ピクチュアズでキャラクターは全て3DCG、これは大いなる挑戦です。期待大ですね。
 
「野中くん発 ジブリだより」11月号
 
 かぐや姫の物語」のブルーレイディスクとDVDがいよいよ12月3日(水)に発売されます。高畑勲監督14年ぶりの新作となるこの作品は、カンヌ国際映画祭で上映され、毎日映画コンクールアニメーション映画賞を受賞するなど高い評価を得てきました。かぐや姫はなぜ月から地球に来て、そして帰らなければならなかったのか。かぐや姫はこの地球でどのように生き、どういう思いを抱いていたのか。題材こそ古典ですが、かぐや姫の真実を新たに描き出したこの映画は、彼女の〝生〞を通して、生きることのかけがえのなさをくっきりと浮かび上がらせ、現代に生きる我々の映画として、多数の観客の共感を呼びました。また、技法も最先端。高畑監督以下制作スタッフは、繊細な手描きタッチの絵がそのまま動き、キャラクターと背景がまるで1枚の絵のように一体化し違和感のない映像を、デジタル技術を駆使して2時間を超える長編映画として作り上げました。高畑監督自身が「今日のひとつの到達点」と言うこの映像のすごさは、出来ればブルーレイディスクで観て頂きたいです。
 また、この映画の制作過程を捉えたドキュメンタリー作品「高畑勲、『かぐや姫の物語』をつくる。〜ジブリ第7スタジオ、933日の伝説〜」もブルーレイディスクとDVDで同時発売されます。これまでにも、高畑作品の現場に取材スタッフが入ってメイキング映像作品が作られることはありましたが、約2年半に亘って長期の密着取材を行ったのは今回が初めて。その成果は201分という長編ドキュメンタリー作品に結実しました。WOWOWで昨年、この素材を使ったメイキング番組が放送されましたが、その時は約90分。今回はその倍以上の長さで、全く新しい映像ドキュメントとして生まれ変わりました。高畑演出の秘密を垣間見ることの出来るこの作品、本編と併せてぜひご覧下さい。発売はいずれもウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンです。
 最後になりましたが、宮崎駿監督が米国のアカデミー名誉賞を受賞しました。受賞の報道はすでに8月末にありましたが、この度、久々に渡米し、11月8日(土)の授賞式に出席して同賞を頂いてきました。これまでの功績が評価されてのことですが、嬉しく、有難いことです。受賞記念で11月21日(金)には「千と千尋の神隠し」が「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系列)で放送されますので、こちらもどうぞよろしく。
 
「野中くん発 ジブリだより」12月号
 
 現在、三鷹の森ジブリ美術館のギャラリーでは"トライホークスの本棚より「長くつ下のピッピ」展"を開催中です。『長くつ下のピッピ』といえば、スウェーデンの著名な児童文学作家アストリッド・リンドグレーンの代表作。今から40年以上前に高畑勲、小田部羊一、宮崎駿の三氏がアニメーション化を企画した作品でもあります。この時は結局映像化は実現しませんでしたが、残されたイメージボードや企画書を収録した書籍『幻の「長くつ下のピッピ」』が、先頃岩波書店から刊行されました。また、リンドグレーン原作の宮崎吾朗監督初のテレビシリーズ「山賊の娘ローニャ」(制作・著作:NHK、ドワンゴ)も、10月からNHKBSプレミアムで放映中です。そこで、ジブリ美術館の図書閲覧室・トライホークスでは、この機会にリンドグレーンの本をもっと知ってもらおうとこの展示を企画しました。作者リンドグレーンと『長くつ下のピッピ』を中心にその他の作品や「山賊の娘ローニャ」の紹介と、宮崎駿監督が当時描いた「ピッピ」のイメージボードの展示など、見応えのある内容になっています。今のところ2月までの開催予定ですので、ぜひどうぞ。また、ジブリ美術館では宮崎駿監督の力作企画展示「クルミわり人形とネズミの王さま展」を開催中ですが、これに加え、宮崎監督はこの秋新たに2つの展示物「雲の道」と「ソレイユ」を制作。展示が開始されました。なお、現在、ジブリ美術館では恒例のクリスマス装飾を実施中。この時期だけ味わえる独特の雰囲気を、どうぞお楽しみ下さい。
 さて、展示と言えば、江戸東京たてもの園で開催中の「ジブリの立体建造物展」ですが、好評につき来年3月15 日(日)まで会期延長となりました。高さ約3メートルの「油屋」の立体模型が特に話題ですが、背景画や美術ボード、美術設定などが大量に展示されており、先頃来日したディズニー/ピクサーのジョン・ラセターさんもこの展覧会を見て大変気に入って下さいました。また、「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」の名古屋展が、名古屋市科学館で好評開催中です。会期は来年1月12日(月・祝)まで。いずれの展覧会も、どうぞよろしく。
 最後になりましたが、スタジオジブリは「宮崎駿監督作品集」のボックスセットを購入された方を対象に、「On Your Mark」特別ディスクの配付を開始しました。詳しくはジブリのホームページをご覧下さい。