文档:吉卜力日誌/2001年12月

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2001年12月
2001年12月
12月1日(土)
 T-2より、前回テストのt-2が上がる。方向性としてはOKなのだが、どう原画にフィードバックさせるかが難しそうだ。やはりプリンターから出力してタップ張替えというのが確実な所だろう。
12月3日(月)
 会計監査が来ているため、会議室が一日使用中。以前に比べると、新会議室、金魚鉢が相次いで仕事場に鞍替えしているため、打ち合わせ場所が減っている。不便だ。
12月4日(火)
 3時より、「バロン」の音響、キャストの打ち合わせを行う。

 夜8時過ぎ、制作居村氏がT-2にテープの返却に行ったところ、全ての扉に鍵がかかっており、建物内に入れなくなってしまう。たまたま親切な人が駐車場の入り口を開けてくれたのだが、いつもの通用口も当然のように鍵がかかっており、ほぼ閉じ込められた状態に。連絡をとろうにも携帯を置いて来てしまい、どうしたものかと途方にくれる。駐車場脇の非常階段に活路を見出すべくT-2のある4階まで登ったのだが、そこもしっかり施錠済み。屋上をぐるっと回ったところ、仕上げのフロアーのお勝手口に光が見える。鍵が掛かっていても、最悪扉を開けてもらえるのではないかとノブに手をかけたところこれがビンゴ。そんなわけで、「おはようございます。スタジオジブリです。」と、4階の屋上からやってきた謎の男を怪しみながらも通してくれた、T-2仕上げ部の皆様に感謝。今度はちゃんと携帯をもって行こうと、心に誓う制作であった。
12月5日(水)
 杉江さんと社内大橋氏の作打ちが行われる。

 夜、東宝の主催で、「千と千尋」大ヒット御礼パーティが、赤坂プリンスホテルにて行われる。実際の制作スタッフだけでなく、出資社の代表の方や、宣伝、映画館の関係者その他作品を支えてくれた多くの方達が集まり、総勢1000人以上の大パーティとなった。ところでこの日は一応ジブリスタッフもおめかしをして行った人も多く、朝からジブリ社内ではスーツを着た人がうろうろ。そのままの格好で絵を描いていたスタッフもいて、仮に今日ジブリを取材に来た人がいたならば、なにか勘違いしたに違いない。
12月6日(木)
 某監督某映画の実写映画の撮影が八王子で現在行われているのだが、サラリーマンのエキストラが足りないためジブリのおじさんスタッフに声がかかる。家もそう遠くないことからジブリ一の一見サラリーマン、総務石迫氏が朝から八王子へ。現場スタッフもそう思ったのか、電車内で主役のすぐ近くに座らされたそうな。ジブリに戻ってきた石迫氏は「ついに映画デビューだ」と興奮していた。
12月7日(金)
 「バロン」撮影出しを行う。数はそんなにないものの、今週は2回目の撮影出しとなる。今週はT-2に行く頻度が多く、制作的には嬉しい限り。今まで仮色塗りだった仕上げも、今後は本番に切り替える予定となっており、一歩ずつでも、ペースを作っていきたいところだ。
12月8日(土)
 先日撮影入れとともに引き渡したハードディスクを回収。今後は撮影データのやり取りは、CDやMOといったメディアでは無く、このハードディスクで行う予定。今はキレイな箱に入っているが、作品が終わる頃にはぼろぼろになっているだろう。かわいい袋とか作ろうかしら。

 2スタの空気の流れが悪いという意見があり、天窓をつける工事が行われる。当然のごとく、美術部は臨時休業。
12月10日(月)
 美術館の準備室に使っていた武蔵境のビルを、神村、渡辺両氏が片付ける。そんなことより、ジブリ内にひそかに点在させている渡辺氏の荷物をどうにかすべきでは、との声多数。
12月11日(火)
 月一回の連絡会議が行われる。

 テレコム竹内、富沢両氏が来社。バロンの森田監督とミーティングが行われる。

 T2の高橋氏が来社、バロン第二回目のラッシュとCG部分のテストが行われる。森田監督からいくつか注文があったが無事終了。まだあまり動きの無いシーンだが、なかなかいい感じに仕上がっている。でも本当はアクションが多い作品なので、動きまくるカットも早く見たいのが本音。
12月12日(水)
 制作居村氏がネズミ捕りにひっかかり、スピード違反で捕まる。最近関係者でオービスにひっかかったり、駐禁を切られたりする人が多いので、どうも一斉取締りが行われているらしい。年末だからねえ。

 真夜中の制作会議が行われる。現在製作中の各作品についての全体のすりあわせと、説明が中心となる。
12月13日(木)
 夜8時より吉祥寺でツール・ド・信州忘年会が行われる。各社忙しいなか50人以上が参加。みんな楽しそうに、苦しかった想い出や、タイムの悪かった言い訳をしつつ、来年への決意を固めるのであった。

 東宝から、来年初夏の映画として「猫の恩返し」の紹介が行われる。
12月14日(金)
 「猫の恩返し」班が、スタッフ増強により場所が狭くなってきたため、三スタから一スタに移ることになる。年末大掃除と共に引っ越す予定。三スタには美術館短編スタッフが移ることに。
12月15日(土)
 年末恒例ジブリバーゲンが行われる。今年も昨年同様巨大なダンボール箱を抱える人がちらほらと。こんなに買っていったいどうするのかと心配になるのだが、日ごろ忙しくて田舎の親戚にも不義理にしている人が多いので、お土産等に消えていくらしい。

 稲城さんがチェコフィルとの録音を済ませプラハから帰国。ところで飛行機はエコノミーでも寝転がって行けるほどガラガラだったらしい。
12月17日(月)
 社内の作画班に対して、作画の責任者になった稲村氏より、今後の社内の仕事の割り振り等、現状についての説明が行われる。「猫の恩返し」「ギブリーズ」美術館作品が入り乱れる展開になりそう。

 3時より、原画大谷さん、「猫の恩返し」の追加作打ち。
12月18日(火)
 5時より「猫の恩返し」ラッシュ。昼過ぎに上がったベーカムを即、チェックする。今回は事前に制作と演助鶴岡氏とで、リテーク出しの手順を再確認し、プロジェクターの操作方法を伝えるなど、準備を整えてラッシュに望む。
12月19日(水)
 ジブリ3スタにあるムゼオが、武蔵境にある事務所へと引越し。その際、置き去りになることの決まっていた事務机と打ち合わせ机を1スタに移動。制作の古い事務机と取り替える。ムゼオは来年、専用の事務所を構えることとなっており、それらにあわせてた一時的な処置。それにしても今までのねずみ色の天板が薄い茶色になっただけで制作が明るくなったのは驚き。

 「猫の恩返し」のキャスト打ち合わせが行われる。
12月20日(木)
昔から作画で使われている急須のふたがこなごなに割れてしまう。応急処置として、瞬着で修理する。う~んまるで発掘された土器のようだ。
プロジェクターの最新機種のデモンストレーションが行われるため、2日間は2スタ試写室は使用禁止となる。
12月21日(金)
 初雪が降る。数日前、制作車にスタッドレスタイヤを装着したところだったので、「ついにスタッドレスの威力を見せる時が来た」と喜んでいたら、あっという間に雨となりおじゃん。因みに某制作も前日の天気予報を見て朝7時から愛車にスタッドレスを付けて会社に来たのだが、その努力も水の泡となる。

 ギブリーズのオーディション、及び、今後のアフレコのため、毎度おなじみの音響機材を2スタ地下牢じゃなかった試写室に運び込む。本体の重さはともかく箱が重い。そんなわけで箱から機材を取り出し、身軽になったところで運び込み。このままの状態で1月いっぱいはおきっぱなしの予定。
12月22日(土)
 近くに借りている商品部の倉庫の大掃除が行われる。各部署から手伝いの人が参加。山盛りの荷物を前に途方にくれるもの多数。

 「ギブリーズ」のオーディションが2スタ地下室にて行われる。今日は子役のオーディションのため、親子連れの方々が多数来社。
12月25日(火)
 クリスマスということで、バーにてケーキが振舞われる。前日のイブにたくさんケーキを食べた人もいたはずなのだが、みんな一目散にバーへ。100人以上が食べられるケーキが一堂に並ぶ光景はなかなか見られるものではない。
12月26日(水)
 3スタ2階のムゼオ部屋跡に、「メイ猫」班のための机を搬入。

 作画班全体に対して、「猫の恩返し」のスケジュールについて説明を行う。
12月27日(木)
 朝一から「猫の恩返し」班の一スタへの引越し、2階に「メイ猫」班の引越しが行われる。前日にダンボールにまとめておいた荷物を制作総出で運ぶ。それにしても見た目やけに荷物が多く見えたのだが、それは用意したダンボールが大きすぎたため、一杯入れると重くて運べず、中身を減らしていったところ、大きい箱が無意味に散乱してしまったということ。そうは言いつつも明日以降の筋肉痛は必至。同時に制作以外の社員総出で大掃除も行われる。

 午後6時半より吉祥寺第一ホテルにてジブリ、ジブリ美術館合同の大忘年会が行われる。昨年は忘年会がなかったので2年ぶりとなる。今年は合同幹事団の頑張りにより、芸、料理等々どれをとっても過去最高の忘年会となる。とくに目を引いたのが出し物。渋谷和生氏を中心とする津軽三味線山田流山田三弦会の演奏にはみな度肝を抜かれた様子。ということでまた来年も頑張りましょう。
12月28日(金)
 今日は通常の仕事日。午後一より、テレコムの面々が来社し、「猫の恩返し」の作画打ち合わせが行われる。

 一応今日で会社的には仕事収めとなる。