文档:紅豬 BD/作品解說

出自宫崎骏与久石让中文百科
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ポルコは、なぜ、豚になってしまったのか?
 
 宮崎駿は、電車に乗るのが好きだ。
 有名人なので、周りが心配すると、こう言ってのける。
 「怖い顔をしていれば、だれも気づかない」
 実際は違う。乗客たちが知らんぷりを決め込んでくれるのだ。ありがたい。しかし、本人はそう思っていない。あるとき、ぼくとふたりで電車に乗った。すると、乗客のひとりがサインをねだってきた。ぼくが小さな声で、やんわり断ると、その人も諦めてくれた。電車を降りて、目的地に近づいたとき、宮さんが怒りだした。
 「鈴木さんがそばにいたから、ばれたんだ」
 ぼくにしても、そういう時は知らんぷりを決め込み、宮さんのことを無視する。このエピソード、じつは単なる笑い話ではない。宮崎駿の本質の一部があるとぼくは思っている。
 「紅の豚」の絵コンテを描き始めたとき、ぼくは驚いた。
 主人公が豚の顔をして、平然と街を歩くシーンがあるのだが、だれも驚かない。むろん、そんな顔をしているのは彼ひとりだ。感想を求められ、ふと口走ってしまった。ポルコは、なぜ、豚になってしまったのか?
 「くだらないよ、そういうのは」
 そういう因果関係をグダグダ説明するから、日本映画はつまらないと言うのだ。しかし、宮さんは、ぼくの要望に応えるべく、ジーナのシーンを付け加えてくれた。
 「どう、これで分かるよね」
 映画を作るとき、宮さんという人は、俯瞰でモノを見ない。
 というか、見ちゃいけない。そう思っている人だ。
 だから、時として、その言動は奇異に映る。
 ぼくにとっては、宮崎駿が作家であることを実感したエピソードのひとつである。
 
2013年3月
スタジオジブリ・プロデューサー  鈴木敏夫
 
(「紅の豚」のブルーレイディスク発売に向けて書かれたものです。)