文档:野中君發吉卜力新聞/2015年

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 2014年 2015年 2016年
「野中くん発 ジブリだより」1月号
 
 皆様、新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。今年の干支は未(ひつじ)。毎年、スタジオジブリでは宮崎駿監督が描き下ろしたその年の干支のイラストを用いた年賀状を制作しており、各スタッフが使っています。今年のイラストは当然羊が描かれていますが、これがまた大変可愛い出来栄え。ジブリのホームページに掲載されているはずなので、宜しければ一度ご覧になってみて下さい。ちなみに、1997年〜2008年までの年賀状のイラストは、宮崎駿監督の著書『折り返し点』(岩波書店刊)の巻頭にカラー口絵で収録されていますので、こちらも機会がありましたらご覧になってみて下さい。
 さて、2015年の最初の話題は1月21日(水)に発売される「高畑勲監督作品集」。高畑監督のブルーレイディスク・DVDのBOXセットです。昨年7月に宮崎駿監督のBOXが発売されましたが、年末にあった高畑監督最新作「かぐや姫の物語」ブルーレイ・DVD発売と連動して、今回は高畑監督のBOXの登場です。「太陽の王子 ホルスの大冒険」から「かぐや」まで劇場用作品全12作を揃えており、もちろんこれは初めてのこと。高畑さんはジブリ以前にも、「ホルス」をはじめいくつかの会社で監督作品がありますが、今回は会社の枠を越えて1つのBOXに揃いました。このBOXで初めてブルーレイ化される「パンダコパンダ」2作や「セロ弾きのゴーシュ」「柳川堀割物語」などの作品もあり、その点でも注目です。本編ディスク11枚、特典ディスク1枚の計12枚組で、発売元はウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン。特典ディスクの「狼少年ケン」2本もぜひ観てみたいですね。
 また、同じ日に、徳間ジャパンコミュニケーションズからは「高畑勲サントラBOX」が発売されます。タイトルが示す通り、高畑監督作品のサントラ盤を集めたCDBOXセットで、アルバム8タイトル(内1つは2枚組なので計9枚)と特典ディスク1枚の10枚組。こちらもレーベルを越えて各社の音源を集め、元々サントラ盤が発売されていない「ゴーシュ」「柳川」「劇場版 赤毛のアン」を除く、劇場用9作品のサントラ盤を揃えています。中でも「ホルス」は、19年前に10枚組CDBOXの1枚として発売されたきりで、長らく入手困難だった音源なので、今回の発売は貴重です。「じゃりン子チエ」も、劇場版のサントラアルバムのCD化は初。この機会にぜひどうぞ。
 
「野中くん発 ジブリだより」2月号
 
 すでに皆さんご存知と思いますが、1月15日(木)夜、第87回米国アカデミー賞のノミネート発表があり、高畑勲監督の「かぐや姫の物語」が長編アニメーション映画部門にノミネートされました。嬉しいことです。長編アニメーション映画部門は2002年開催の第74回から設けられた割と新しい賞ですが、翌年の第75回で「千と千尋の神隠し」が受賞しています。その後も2006年に「ハウルの動く城」、2014年に「風立ちぬ」がノミネートされましたが残念ながら受賞には至りませんでした。昨年秋には宮崎駿監督がアカデミー名誉賞を授与されましたが、これは個人の長年の業績に対しての賞。もし「かぐや姫」が受賞したら、ジブリ作品に対する賞としては12年ぶりの栄誉ということになります。「千尋」のときはイラク戦争開戦の時期で、監督やプロデューサーは渡米を控えましたが、今回は高畑監督、西村義明プロデューサーが2月22日(日本時間だと23日月曜日の午前)開催の授賞式に出席の予定。ノミネート作品は全部で5本あり、この中から1本がその日、選ばれるわけですが、出来れば壇上でオスカー像を受け取る2人の姿を見たいですね。
 アカデミー賞と言えば、1月14日(水)に発表された第38回日本アカデミー賞優秀賞で「思い出のマーニー」がアニメーション作品賞部門の受賞作となりました。こちらの授賞式は2月27日(金)。当日、5本の優秀賞作品の中から1本が、最優秀アニメーション作品賞に選ばれます。米林宏昌監督と西村プロデューサーが出席予定ですが、やはり受賞を期待したいです。
 さて、以前にもこのコーナーで紹介しました、小金井公園内の江戸東京たてもの園で開催中の「ジブリの立体建造物展」、昨年7月から始まって好評につき会期を3ヶ月間延長しましたが、いよいよ終幕が近づいてきました。最終日は3月15日(日)。延長に伴い、新たに音声ガイドが導入され、展示品もいくつか入れ替えや追加が行われていますので、ぜひどうぞ。
 最後になりましたが、「かぐや姫の物語」で劇中歌として流れ好評だった「わらべ唄」「天女の歌」が、久石譲さんの手により新たに合唱曲「わらべ唄」として生まれ変わりました。同作の背景音楽に高畑監督が新たに歌詞を付けた合唱曲「なよたけのかぐや姫」と共に新録音され、シングルCD「かぐや姫の物語〜女声三部合唱のための〜」として徳間ジャパンコミュニケーションズより発売中です。どうぞよろしく。
 
「野中くん発 ジブリだより」3月号
 
 3月18日(水)、スタジオジブリの最新作「思い出のマーニー」のブルーレイディスクとDVDが発売になります。昨夏公開された米林宏昌監督第2作。原作はイギリスの児童文学の名作ですが、映画は舞台を北海道に移し、心を閉ざしてしまった12歳の少女・杏奈が、マーニーという謎の少女と出会い、不思議な体験を通して次第に自分を取り戻してゆく様を情感豊かに描きます。そして明らかになる感動の真実。昨夏の劇場公開では「あなたのことが大すき。」というコピーでしたが、今回のブルーレイ・DVD発売では新たに「ジブリの涙。」というコピーと米林監督の「変わろうと願う人だけが変われると、ぼくは思っているんです」という言葉が宣伝の柱になりました。米林監督の言葉は、この間の色んなキャンペーンでの彼の発言からピックアップされたものですが、この作品のテーマとも言える〝1歩を踏み出す勇気〞の大切さが感じられます。この日は高畑勲監督の4作品「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」「平成狸合戦ぽんぽこ」「ホーホケキョ となりの山田くん」のデジタルリマスター版DVDも同時発売。ブルーレイディスク用の新マスターを使い、一段と高画質になりました。発売元はいずれもウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンです。
 「思い出のマーニー」と言えば、昨夏江戸東京博物館で開催されて好評だった「思い出のマーニー×種田陽平展」が、今度は4月3日(金)から6月7日(日)まで愛媛県美術館で開催されます。「マーニー」の美術は実写映画の美術監督・種田陽平さんが担当し素晴らしい作品世界を築いてくれましたが、この世界を実写映画美術の技術と創造力で巨大空間でも展開したこの展覧会、映画を観た人はもちろんのこと、まだ観ていない人にも大変楽しめるものになっています。愛媛展では東京展にはなかった、種田さんらの仕事場を再現した新しい展示も増えていて、ますますパワーアップしているのも見逃せません。どうぞ宜しく。
 最後になりましたが、「かぐや姫の物語」が3月13日(金)に金曜ロードSHOW!でテレビ初放送されます。アカデミー賞長編アニメーション映画部門にもノミネートされたこの作品、残念ながら受賞には至りませんでしたが、高畑勲監督が改めて会見でも触れていたように、手描きアニメーションの1つの究極と言える出来映えを示していると思います。放送はいつもより約1時間早い19時56分より。ぜひご覧下さい。
 
「野中くん発 ジブリだより」4月号
 
 春になりました。この号が出るまでにはきっと桜もすっかり咲いていることでしょう。この時期、ジブリ関連の色んな展覧会が各地で実施されます。
 まず「思い出のマーニー×種田陽平展」が6月7日(日)まで松山市の愛媛県美術館で開催中です。ジブリ最新作「思い出のマーニー」は先日ブルーレイディスクとDVDが発売されたばかりですが、この作品が昨夏封切られた折に、江戸東京博物館で開催され大好評だった展覧会の巡回展です。愛媛県美術館では「借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展」も開催しているので、いわばその第2弾と言えるでしょう。「アリエッティ展」の時と同様に、美術監督・種田陽平さんが平面のアニメーション世界を三次元の立体空間の中で鮮やかに展開。東京展には無かった展示も加わって、前回以上に見応えのある内容になっています。
 次に、新潟市アニメ・マンガ情報館で5月10日(日)まで開催中の「スタジオジブリ『思い出のマーニー』監督 米林宏昌原画展」。こちらも昨年、池袋や横浜で開催され好評だった展覧会の巡回展です。ご存知のように米林監督(愛称・麻呂)はアニメーター出身で絵が上手く、特に少女の描写に定評があります。この展覧会のコピーは「麻呂が描くジブリヒロインたち。」。米林くんがこれまでジブリ作品でアニメーターとして描いてきた原画や、監督作「アリエッティ」「マーニー」で描いたイメージボード・スケッチ類、そして個人的に描いてきたイラストを多数展示し、繊細で気品ある彼の絵の魅力が堪能出来ると共に、それぞれのジブリ作品の世界にも触れることが出来る展覧会です。
 そして熊本市現代美術館では4月11日(土)から6月28日(日)まで、「館長庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」が開催されます。庵野館長、樋口真嗣副館長らの熱い特撮への思いがぎっしり詰まったこの展覧会、もはや説明は不要でしょう。2012年夏に東京都現代美術館で実施され大変好評でしたが、その後愛媛、新潟、名古屋と巡回し、この熊本展が最終開催地となります。お見逃しなく。
 最後にご紹介するのは、信州小布施の北斎館で6月30日(火)まで開催中の「北斎とその弟子たち 北斎絵画 創作の秘密」。同館の新館落成を記念して開かれるこの展覧会、「神奈川沖浪裏はいかにして生まれたか?」がテーマです。縁あってジブリは企画協力として関わっていますので、こちらもどうぞ宜しく。
 
「野中くん発 ジブリだより」5月号
 
 三鷹の森ジブリ美術館では、5月30日(土)から新企画展示「幽霊塔へようこそ展│通俗文化の王道│」が始まります。企画・構成は宮崎駿監督。
 タイトルにある『幽霊塔』とは、江戸川乱歩の長編小説のこと。元々はイギリスの作家A・M・ウィリアムスンが1898年に発表した小説『灰色の女』を翌1899年に黒岩涙香が翻案し『幽霊塔』の名で発表、それを1937年に乱歩がさらに翻案して執筆したのが乱歩版『幽霊塔』です。宮崎監督は乱歩の『幽霊塔』を子供の頃に貸本屋で借りて読み、すっかり虜になりました。謎が謎を呼ぶストーリー、勇敢な青年と美しい女性との大ロマンス。中でも物語の舞台となる、幽霊塔と呼ばれる時計塔が大変気に入り憧れたそうで、深く記憶に残りました。その後、アニメーターとなってアニメーション制作に携わるようになり、1979年に「ルパン三世 カリオストロの城」で初めて劇場用長編アニメーション映画の監督を務めますが、宮崎監督は『幽霊塔』から受けとめた様々な要素を、自身の内で反芻し発展させこの映画に盛り込みました。今回の展示は宮崎監督のその思考プロセスを、エンターテインメント豊かに解き明かしていきます。
 宮崎監督は今回、乱歩の『幽霊塔』を約60年ぶりに読み返し、この小説は通俗文化の王道を行くものであると思い至ったそうです。通俗文化は人から人へ、バトンのように受け継がれていくものであると監督はよく言いますが、前述した『幽霊塔』という小説の成り立ちは、まさに通俗文化ならではと言えるでしょう。監督は今回も描き下ろしで10数枚のパネルを制作、漫画の形で『幽霊塔』と通俗文化、そして近代について語ります。これがまた大変濃密な絵で、もちろんとても面白い。これだけでも見る価値がありますが、それは今回の展示の一部にすぎません。この展示では、何と館内中央ホールに「時計塔」を実際に作ってしまいます。その中の螺旋階段を昇り展示室へ向かうと、そこには宝物が隠された地下迷宮を思わせる迷路が子供たちを待ち受けています。そして「ルパン三世 カリオストロの城」のジオラマが登場。映画の雰囲気を存分に楽しめると共に、舞台設定を紹介します。怪奇大ロマンの『幽霊塔』の世界をどうぞお楽しみ下さい。
 なお、ジブリ美術館は予約制ですが、初めての試みとして7、8月分のチケットの先行抽選販売を実施します。詳しくはホームページをご覧下さい。
 
「野中くん発 ジブリだより」6月号
 
 現在、あの猫のキャラクター"コニャラ"の第三弾CMが放映中です。コニャラは鈴木敏夫プロデューサーが描いた、可愛らしいけどちょっと無愛想な感じの猫。2010年に日清製粉グループ110周年記念の広告キャラクターとなり、スタジオジブリ制作の、筆ペンで描かれた優しいタッチのアニメーションCMが話題になりました。そのため、2012年には第二弾CMが作られ、新キャラクターとして子猫の"子コニャラ"が登場。又も好評だったため、日清製粉グループのコニャラCMシリーズはさらに続き、今回、ますます増えた子コニャラたちと共に、コニャラは三たび帰ってきたわけです。この第三弾CMも前作と同様に、構成・作画は「魔女の宅急便」「崖の上のポニョ」などの作画監督で知られる近藤勝也くんが担当。音楽もやはり引き続き矢野顕子さんで、オリジナル曲「おなかすいたねの歌」を披露して下さっています。観ると楽しくなる温かさと優しさ、そしてユーモア。日清製粉グループのホームページでもご覧いただけます。https://www.nisshin.com/konyara/
CM放映と時期を合わせて各種媒体に掲載される同社の企業広告にも、コニャラと子コニャラのキャラクターは登場していますので、どうぞ宜しく。

 さて、三鷹の森ジブリ美術館の新企画展示「幽霊塔へようこそ展 ─通俗文化の王道─」がいよいよ始まりましたが、これに連動して江戸川乱歩の『幽霊塔』単行本が、ジブリ出版部編集で岩波書店から発行されました。宮崎駿監督が展示のために描き下ろした原画をカラーで全16ページ収録。こちらもぜひどうぞ。なお、6月25日(木)〜6月30日(火)に、ジブリ美術館では8月分のチケットの先行抽選販売受付を実施します。詳しくは同館のホームページをご覧下さい。

 最後に、ジブリが関わっている展覧会の情報を。あの「館長庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」は、現在好評開催中の熊本市現代美術館が最終会場。6月28日(日)でいよいよフィナーレを迎えますのでぜひご覧下さい。一方、釧路市立美術館では「米林宏昌原画展」を7月5日(日)まで開催中。「思い出のマーニー」の舞台である北海道での開催は一段と味わい深い物になっています。そして今月号の特集にも関連した、信州小布施の北斎館で開催中の「北斎とその弟子たち 北斎絵画 創作の秘密」は、いよいよ6月30日(火)まで。こちらもどうぞ宜しく。
 
「野中くん発 ジブリだより」7月号
 
 7月17日(金)、スタジオジブリ関連の映像ソフトが5作品、一気に発売されます。まず「海がきこえる」のブルーレイディスク。1993年に制作・放映され一部劇場公開もされた、氷室冴子原作・望月智充監督の長編テレビスペシャルです。「海」は劇場作品と同じ35㎜フィルム撮影。なので、他のフィルム作品と同様、4Kデジタルリマスターで高画質のブルーレイ化をしています。これで「風の谷のナウシカ」から「思い出のマーニー」まで、ジブリ全長編のブルーレイが揃いました。この機会に未見の方はぜひご覧下さい。
 次に、宮沢賢治原作、高畑勲監督の「セロ弾きのゴーシュ」。1982年製作のオープロダクション作品で、青春映画、音楽アニメーションの傑作です。単品ブルーレイは今回初発売で、オリジナルネガをスキャンしてやはり4Kデジタルリマスターで制作。今年4月に新録音の、高畑監督と才田俊次作画監督のオーディオコメンタリーを収録、カラー24ページのブックレットも付属。新マスター版DVDも同時発売です。
 他の3作品はいずれもトムス・エンタテインメント作品で、やはりブルーレイディスクと新マスター版DVDの同時発売。「じゃりン子チエ 劇場版」は1981年の高畑勲監督作品で、はるき悦巳氏の大ヒット漫画を、笑いあり、涙あり、さらにアクションもありの心にしみるドラマとしてアニメーション化。根強いファンの多いこの作品、後にテレビシリーズが多数作られた、その出発点となった傑作です。関西のお笑いスターが声の出演で勢揃いしているのも楽しいですね。
「パンダコパンダ」は1972年の1作目と1973年の続編「雨ふりサーカスの巻」の2本立。演出:高畑勲、脚本:宮崎駿のコンビが子供たちに贈る永遠の名作です。単品のブルーレイディスク化はこれも今回初で、ファン待望です。引き続き、三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー提供での発売となります。
 最後は宮崎駿監督の「劇場版 名探偵ホームズ」。「風の谷のナウシカ」の併映作として1984年に劇場公開された作品です。これぞ漫画映画、アクションに次ぐアクション、犬のホームズが大活躍する快作で、何度観ても飽きない面白さに満ちた冒険活劇です。
 発売元はすべてウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンで、同社と文藝春秋のコラボレーション企画「ジブリがいっぱいCOLLECTION×文春ジブリ文庫サマーキャンペーン」も同時にスタート。ぜひ宜しく。
 
「野中くん発 ジブリだより」8月号
 
 すでに色々報道が出ているのでご存知の方も多いと思いますが、宮崎駿監督は今、三鷹の森ジブリ美術館用の新作短編アニメーションの準備中です。小さな毛虫のボロが主人公の作品ですが、実はこの企画は、90年代半ばに「もののけ姫」と同時期に劇場用長編映画化が検討されました。「ボロ」として企画書も書かれたのですが、結局「もののけ姫」が映画化され「ボロ」は製作されませんでした。しかし、宮崎監督の中ではこの企画は消えることなくずっと温められ続けてきたようで、今回、新たに短編の企画として、本格的に制作準備作業に入りました。以前から宮崎監督はジブリ美術館の短編について、月1本ずつ上映して丸1年で一巡するように全部で12本作ろう、という意向がありました。現在、ジブリ美術館の短編は9本あるので、完成すれば10本目ということになります。今年6月から準備作業が続いていますが、完成までまだ掛かりますので、どうかお待ち下さい。それまで、好評開催中のジブリ美術館新企画展示「幽霊塔へようこそ展 -通俗文化の王道-」をどうぞ宜しく。
 さて、この号が出るのは8月半ば。夏真っ盛りですが、夏休みということで、金曜ロードSHOW!は8月にジブリ作品を3週連続で放送します。今回はいずれも高畑勲監督作品で、まず、終戦記念日の前日の8月14日(金)は「火垂るの墓」をオンエア。翌週の21日(金)は「おもひでぽろぽろ」。そして28日(金)は「平成狸合戦ぽんぽこ」です。3本とも夏が関連した作品ですが、特に「火垂る」「おもひで」は内容がほぼ夏の話なので、いわば〝ジブリの夏祭り〞といったところ。ちょうど製作順での放映なので、続けて観ると、80年代後半〜90年代前半の高畑監督の長編アニメーション作品をすべて順番通りに鑑賞することが出来て、大変充実したラインナップです。例によって、放映時のセカンドスクリーン展開も実施予定。本編ノーカット放送ですのでぜひ3本続けてご覧下さい。
 最後になりましたが、吉永小百合さん編、男鹿和雄さん画の詩画集『第二楽章 ヒロシマの風 長崎から』が徳間書店から発売になりました。別々に出ていた2冊を1冊にまとめ、美しいハードカバー本として新刊行。また、ちょうど今、広島県熊野町の筆の里工房では8月30日(日)まで「第二楽章 男鹿和雄展 吉永小百合と語り継ぐ」を開催中です。詳しくは筆の里工房のホームページをご覧下さい。http://fude.or.jp/}-
 
「野中くん発 ジブリだより」9月号
 
 愛知県の愛・地球博記念公園(モリコロパーク)で9月12日(土)から11月8日(日)まで「ジブリの大博覧会」が開催されます。今回、全国都市緑化あいちフェアがモリコロパークで開催されますが、ここは10年前の愛知万博会場跡地であり、現在もサツキとメイの家が展示中です。そうしたご縁もあり、同フェアの一環としてこの展覧会の実施が決まりました。
「ジブリの大博覧会」は2つの大きな柱があります。1つはおなじみの「思い出のマーニー×種田陽平展」。映画「思い出のマーニー」の世界を、同作の美術監督であり元々実写映画の美術監督として世界的に著名な種田陽平さんが巨大空間アートで表現。さらに、物語の重要なシーンを描いた精細で幻想的なジオラマや背景画の数々、映画には出てこない美術設定資料の展示もあり、アニメーション美術と実写映画美術が融合した種田さんの「映画の美術」を丸ごと楽しめます。
 もう1つは、本邦初公開となる「ジブリの大博覧会展」。「風の谷のナウシカ」から「思い出のマーニー」まで、スタジオジブリ30年間の歩みを数千点の貴重な資料で振り返ります。これまでジブリ作品がどのように生み出され、世に出て行ったか。ポスターやチラシ、新聞広告やノベルティグッズといった広告宣伝物を中心に、制作資料、企画書、写真など未公開資料を含む多数の品々が所狭しと展示空間を圧倒します。鈴木敏夫プロデューサーはこの展覧会について「汗と涙の30年間を、是非見てください。」とコメントしていますが、作品の伝え方・伝わり方、そして作品を生み出したジブリというスタジオそのものを感じてもらえる、これまでに例のないユニークで多彩な展覧会となることでしょう。この展覧会のために社内で大号令が下り、ここ数か月、各スタッフが探索作業を続けた結果、色んな資料が発掘されました。まだ最終的な展示内容を私も観ていないのですが、オープンが楽しみです。
 さて、展覧会といえば、香川県立ミュージアムで好評開催中の「近藤喜文展」はいよいよ9月27日(日)まで。本当に素晴らしく充実した内容の展覧会ですので、まだの方はぜひご覧下さい。
 最後になりましたが、昨年より実施中の「On Your Mark」特別ディスクの配布、申込締切が10月31日(土)と段々迫って来ました。「宮崎駿監督作品集」のブルーレイ又はDVDのボックスをお買い上げの方が対象です。詳しくはジブリのホームページをご覧下さい。
 
「野中くん発 ジブリだより」10月号
 
 先月もお伝えしましたが、愛知県長久手市の愛・地球博記念公園(モリコロパーク)では現在「ジブリの大博覧会」が開催中。お陰様で好評とのことで、多くの方にお越しいただいており本当に有難いことです。「思い出のマーニー×種田陽平展」と「ジブリの大博覧会展」の2つがメインの企画ですが、「大博覧会展」は今回が初開催で、ジブリの30年を主に作品の宣伝と公開の面から伝えるという、内容的にも初めての試みだったので、どんな風になるのか、正直言って社内でも担当者以外はよく分かっていませんでした。しかし出来上がった会場を見ると、初公開の貴重な資料や懐かしいグッズ、宣伝ポスターなど様々な展示品が高密度に並んでおり、かと思うとスタジオの内部が一部再現されていたり、あの〝お宝〞や、誰もが乗りたい超有名キャラクターの新作巨大立体造型物の展示もあったりして、原画等が多数並んでいる一般的な展覧会とは一味もふた味も違う、ユニークで賑やかな催しになったと思います。一方、各地を巡回して今回が3会場目の「マーニー×種田展」、すでに高い評価をいただいていましたが、展示物が増えてさらにパワーアップ、全体の構成もリニューアルされており、一度観た人も、あるいは「マーニー」の映画を観たことが無い人でも、十分に楽しめる充実した展覧会になっています。「ジブリの大博覧会」、興味のある方はぜひ一度ご覧下さい。東京からでも日帰り可能ですが、名古屋に泊まって近辺の観光をするのもいいですね。さらに、サツキとメイの家のチケットがうまく取れて一緒に観られれば最高です。会期は11月8日(日)まで。
 さて、あの『第二楽章』シリーズ最新刊、詩画集『第二楽章 福島への思い』が発売されました(編集・発行:スタジオジブリ、発売:徳間書店)。吉永小百合さんのライフワークである、広島・長崎の原爆詩、沖縄の悲劇の物語の朗読はこれまでCD、本、朗読会などで展開されてきましたが、この春、新たに吉永さんによって編まれた福島編のCDに収録された詩に、今回も男鹿和雄さんが描いた素晴らしい挿絵が組み合わさって生まれたのがこの本です。すべての詩に英訳が付いており、世界中の人達に届いて欲しいですね。
 最後になりましたが、「On Your Mark」特別ディスクの配布はいよいよ10月31日(土)が締切です。「宮崎駿監督作品集」ブルーレイ又はDVD購入者で未入手の方は、ジブリのホームページをご覧下さい。
 
「野中くん発 ジブリだより」11月号
 
 以前にもお伝えしましたが、スタジオジブリでは現在、宮崎駿監督の最新作「毛虫のボロ」を制作中です。三鷹の森ジブリ美術館で上映するための、10本目のオリジナル短編アニメーションとなるこの作品ですが、10月初めに絵コンテが完成しました。今回も宮崎監督は水彩絵の具で絵コンテに色を着けていて、見ているだけで引き込まれます。これがCGで一体どのように映像化されるのか。スタッフも少し増え、制作も本格化しつつありますが、完成まで今しばらくお待ち下さい。そうそう、宮崎監督の着彩画と言えば、最新長編作「風立ちぬ」の原作漫画が本になりました。元々、映画の制作前に9回に亘って雑誌に連載されたものですが、『宮崎駿の雑想ノート』『飛行艇時代』などの本と同様に大日本絵画からの発売です。
 さて、石巻市の石ノ森萬画館では「近藤喜文展」を開催中です。昨年夏に近藤さんの故郷の新潟で開催され、大変好評だったので巡回展が決まったこの展覧会、夏の高松市での開催に続き今回が3か所目となります。『熱風』の読者ならご存じの方も多いと思いますが、近藤喜文さんは大変優れたアニメーターで、「赤毛のアン」「名探偵ホームズ」「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」などのキャラクターデザインや作画監督を担当し、高畑勲監督、宮崎駿監督の作品を長年支えてきました。世界的に見ても屈指の才能だったと思います。1995年の「耳をすませば」で劇場用長編を初監督しますが、残念ながら98年1月、病により急逝。本当に悲しい出来事でした。この「近藤喜文展」は、まとまった形での初めての近藤さんの展覧会です。ジブリイベント事業室の担当者は、生前の近藤さんと制作現場で一緒に仕事をした、近藤さんをよく知るスタッフであり、近藤さんの絵が元々素晴らしいのはもちろんですが、スタッフの近藤さんへの思いも展示に反映されて、本当にいい展覧会になったと思います。多数の展示品はとても充実しており、ジブリ作品だけでなく70年代の「未来少年コナン」「赤毛のアン」なども幅広く展示されていて見応え十分。来年4月10日(日)までの長期開催ですので、東北地方の方はもちろんのこと、多少遠方の方も、可能ならばぜひご覧下さい。
 最後になりましたが、三鷹の森ジブリ美術館は11月10日(火)から20日(金)まで恒例のメンテナンス休館中。11月21日(土)より再開しますので、企画展示「幽霊塔へようこそ展」ともども、どうかよろしく。
 
「野中くん発 ジブリだより」12月号
 
 この号が出る12月、三鷹の森ジブリ美術館は恒例のクリスマス装飾真っ最中です。ジブリ美術館のクリスマス装飾は毎年、何らかのテーマがあり、それに沿って趣向が凝らされています。たとえば一昨年は「中世ベネチア」で昨年は「ドイツのクリスマス」でした。いずれも当時開催中だった企画展示「ジブリの森のレンズ展」「クルミわり人形とネズミの王さま展」にちなんでいましたが、さて、今年はどんな飾り付けになっているでしょうか。12月は毎年少なからぬお客様に、このクリスマス装飾を目当てにジブリ美術館にお越しいただいており、担当者も力が入っている様子。手前味噌ながら、確かにあの雰囲気はなかなかのものだと私も思います。ジブリ美術館の空間とクリスマスとは相性がいいのでは。機会がありましたら、年に一度の貴重なこの時期のジブリ美術館をどうかご覧下さい。なお、現在好評開催中の企画展示「幽霊塔へようこそ展―通俗文化の王道―」との関連で、ギャラリー展示「ミステリーへようこそ」展も10月下旬より始まっています。企画展示を観てミステリー小説に興味を持った方に、おススメ本を紹介する内容で、様々なジャンルに亘ってガイドを試みていますので、こちらもどうぞ宜しく。今のところ2月15日(月)までの開催予定。なお、三鷹の森ジブリ美術館のチケットは予約制です。
 さて、ジブリ関連の新商品を3つご紹介します。まず、この夏大ヒットした「映画 ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~」のブルーレイ+DVDセットが三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーとして12月16日(水)にリリース。イギリスのアードマン制作の短編テレビシリーズ「ひつじのショーン」は日本でも大人気ですが、長編映画になってもその面白さは健在どころかむしろパワーアップ。発売元はウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンです。2つめは、ジブリ作品の主題歌・挿入歌を集めた2枚組コンピレーションCD「スタジオジブリの歌―増補盤―」。2008年に出た同タイトルCDに「思い出のマーニー」までの直近5作品分の歌をしっかり増補してリニューアル。徳間ジャパンコミュニケーションズより発売中です。そして、本誌に連載されて評判だった舘野仁美さんの『エンピツ戦記 誰も知らなかったスタジオジブリ』の単行本。加筆されてさらに読み応えが増し、鈴木敏夫プロデューサーの序文も新たに収録。中央公論新社より発売中です。皆様いずれもどうぞ宜しく。